本屋さんで平積みにされていた文庫本「キネマの神様」を手に取る。
帯には「本を、映画を、家族を愛するすべての人に。」
つづいて裏表紙の「あらすじ」に目を通す。
39歳独身の歩は突然会社を辞めるが、折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、多額の借金が発覚した。ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに歩は編集部に採用され、ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることに。"映画の神様"が壊れかけた家族を救う、奇跡の物語。
これは面白そう。
今までにない映画レビューを書こうと挑戦し、その度に挫折してきた。
この本には、なにかヒントがあるかもしれない。そう思って購入した。
冒頭から心を鷲掴みにされる
暗闇の中にエンドロールが流れていた。
ごく静かな、吐息のようなピアノの調べ。真っ黒な画面に、遠くで瞬く星さながらに白い文字が現れては消えていく。
観るたびに思う。映画は旅なのだと。
なんとすてきな描写なのかしら。そのまま最後まで、一気に読んでしまった。
「キネマの神様」で言及されていた映画
本書では、何気ない会話で映画タイトルがバンバン出てくる。
「あの人観てると『カッコーの巣の上で』のラチェッド婦長を思い出すんだよなあ」
「あんたは『サスペリア』のジェシカ・ハーバーあたりがヒロインでしょ」
作品を知らなくてもいいが、知ってるとより楽しめるはず。また、さらっとネタバレしてる作品も何本かある。できれば、事前に鑑賞していたほうがいいだろう。参考までに、言及のあった作品タイトルを記しておく。ざっと確認しただけなので抜けているものがあるかもしれないが。
- ワーキング・ガール
- カッコーの巣の上で
- セックス・アンド・ザ・シティ
- テルマ&ルイーズ
- (キートンの喜劇映画)
- 自転車泥棒
- 或る夜の出来事
- カサブランカ
- シャイニング
- ニュー・シネマ・パラダイス
- ライフ・イズ・ビューティフル
- グッドナイト&グッドラック
- ブロークバック・マウンテン
- ローマの休日
- あなたがいたら、少女リンダ
- モーリス
- 予告された殺人の記録
- 花嫁のパパ
- アバウト・シュミット
- サスペリア
- 時をかける少女
- キングコング
- ゴジラ
- ガメラ
- ミクロの決死圏
- 第三の男
- ALWAYS 三丁目の夕日
- フィールド・オブ・ドリームス
- 父親たちの星条旗
- 硫黄島からの手紙
- 眺めのいい部屋
- アメリカン・ビューティー
- シンドラーのリスト
- アイ・アム・サム
- フォレスト・ガンプ
- インディー・ジョーンズ 最後の聖戦
- ターミナル
- ビッグフィッシュ
- ハリー・ポッター
- パイレーツ・オブ・カリビアン
- 市民ケーン
- シェーン
- 荒野の七人
- 小説家を見つけたら
- プライベート・ライアン
- タイタニック
- アメリ
- 戦場のピアニスト
- イングリッシュ・ペイシェント
- Shall we ダンス?
- 七人の侍
- 猿の惑星
- オール・アバウト・マイ・マザー
- トーク・トゥー・ハー
- ゴースト ニューヨークの幻
- 天国から来たチャンピオン
- 捜索者
- ゾディアック
- 殺人狂時代
まとめ
本書のテーマのひとつは「父」であった。映画で「父」はどう描かれていたのか。どう読み解くべきなのか。そのあたりが日米の映画レビュアーが対決するひとつの山場となっていた。
読んでいたのは図らずも「父の日」。思わず父を思い出してしまい、なかなかに感慨深かった。