リュック・ベッソンの作品に夢中になった時期があった。
独特な世界観、スタイリッシュな映像、キャスティングされる魅力的な女性。書籍「リュック・ベッソンの世界」を購入して何度も読み返した。10作で監督業から引退すると公言した時はやめないで欲しいと願った。
いつからだろうか、彼の作品に魅力を感じなくなったのは。フィルモグラフィーを確認すると、彼の映画製作の動機は、自分のため、恋人のため、会社のため、と変遷をたどっている。
鑑賞した10作目までが中心となるが感想をまとめた。
1作目:最後の戦い(1983)
環境の激変により文明が破壊されてしまった近未来。生き残った男たちが最後の戦いを繰り広げる。
24歳のリュック・ベッソンによって自主映画さながらに製作された本作。全編モノクロ、セリフなし。圧倒的に説明が不足し、映画としては不親切極まりない。
しかし、「リュック・ベッソンの世界/最後の戦い」には野心溢れる青年がどれほどの困難と戦い、完成のために奮闘したかが記されている。その背景を知ると、面白い面白くないだけでは評価できなくなる。
本作は、アヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭の審査員特別賞・批評家賞を受賞。この受賞はリュック・ベッソンにとって計り知れない喜びであった。作品が評価されなければ借金まみれで首をくくるしかなかったからだ。一か八かのギャンブルに勝った瞬間だった。
2作目:サブウェイ(1984)
重要書類を盗んだ金髪男のフレッド。パリの地下鉄に逃げ込むが、そこには風変わりな若者たちが生活していた。
クリストファー・ランバートの金髪に憧れて金髪にした友人がいた。それほどにかっこいい映画。荒唐無稽なストーリーだが印象的なシーンに溢れている。
制作当時、26歳のリュック・ベッソンは資金を出したウォーレン・ベイティに悩まされたという。ベイテイは、お金を出す代わりに口も出した。その内容は、自身の恋人であったイザベル・アジャーニを美しく撮れというものだった。たしかに彼女の登場シーンはすべて美しい。
ベッソンは、資金提供者のオーダーにしっかりと応えたといえる。と同時に「女性のために作品を撮る」というスタイルが確立したのかもしれない。
3作目:グラン・ブルー(1988)
素潜りのプロ、ジャックとエンゾ。親友であり、ライバルでもあった2人。参加した国際大会に悲劇が待ち受けていた。
実在する素潜り名人ジャック・マイヨールに心酔したベッソンが「海に対する愛」を映像化した作品。
海を愛し、海に生きたいと願ったベッソン少年。しかし、17歳の潜水事故が原因でその夢を諦める。そして彼は、次に好きだった映画の世界に足を踏み入れる。好きな「海」を好きな「映画」で描く。想いが込められた作品は論理を超えた感動をもたらした。
個人的な強い想いによって作られた本作は、当然のことながら多くの観客の心を動かした。フランスを始め全世界で大ヒット。社会現象にまでなった。
4作目:ニキータ(1990)
警官3人を殺害し無期懲役を言い渡された少女。政府の秘密機関に見出され、暗殺者としての道を歩むことになる。
1人目の伴侶、アンヌ・パリローのために作った作品。
作品の中盤、強引な展開に違和感を持つ。その理由は、「リュック・ベッソンの世界/ニキータ」の中に記されていた。リュック・ベッソン監督は撮影が始まってからシナリオの破綻に気づき、製作途中で大幅に書きなおしたという。限られた時間の中、強引な展開は監督も苦渋の決断だったのだ。
そんな背景がありながらも、作品には魅力的なシーンが数多くある。毎度のオープニングカットも、壁越しに泣きながらミッションをこなすニキータも、哀愁ただようラストシーンも。
本作で、アンヌ・パリロー(婚姻期間:1986 - 1991)はセザール賞主演女優賞を受賞する。しかし、その授賞式でリュック・ベッソンは2人目の伴侶マイウェン(婚姻期間:1993 - 1997)に出会う。当時、マイウェンは15歳。こういうところが自由すぎる。
5作目:アトランティス(1991)
海への深い愛情を謳い上げたドキュメンタリー。魚たちの動きや海の表情を、美しい映像で描き出していく。
ベッソンが愛する「海」がテーマ。海中映像とナレーション、そしてエリック・セラの音楽を楽しむ映画。リュック・ベッソン監督は音楽に、マイルス・デイヴィスの起用を熱望していたが、それは叶わなかった。実現していればまた違った作品になったのかもしれない。
6作目:レオン(1994)
家族を惨殺された少女マチルダは、隣人の殺し屋レオンに助けられる。彼女は、復讐のためレオンに弟子入りする。
リュック・ベッソン、念願のハリウッド進出作。作品の評価は高く、「レオン」をマイ・ベストに挙げる人も多い。
マチルダのモデルは2人目の伴侶、マイウェンとのこと。彼女は17歳で彼の子供を出産している。ちょっと若すぎやしないかと思う。
7作目:フィフス・エレメント(1997)
23世紀の地球に、巨大なエネルギー体が接近してきた。地球滅亡の危機に立ち向かう男女の姿を描く。
リュック・ベッソン少年が思い描いた世界観を大金を使って映像化した作品。
2人目の伴侶、マイウェン(婚姻期間:1993 - 1997)がオペラ歌手ディーヴァ・プラヴァラグナ役。3人目の伴侶、ミラ・ジョヴォヴィッチ(婚姻期間:1997 - 1999)が主役のリー・ルー役。
ちなみに、マイウェンはこの人。
8作目:ジャンヌ・ダルク(1999)
フランス救国の英雄と謳われながらも、狂人・魔女などと囁かれてきたジャンヌ・ダルクの知られざる生涯を描く。
3人目の伴侶、ミラ・ジョヴォヴィッチを主演にした歴史作品。ダスティン・ホフマンが出てる。
2001年、リュック・ベッソンはハリウッドに対抗するため映画スタジオ「ヨーロッパ・コープ」を立ち上げる。4人目の伴侶、ヴィルジニー・シラ (2004 - )は、ヨーロッパ・コープのプロデューサー。
9作目:アンジェラ(2005)
48時間後に殺される運命にあり、生きる希望を失い死を覚悟した男と、突然目の前に現われた女性の姿を描く。
大女と男の会話の中に過去のリュック・ベッソン作品を彷彿とさせるシーンの数々。「OKって言うな」「OK」(レオン)や、二人が鏡に向かって話すシーン(ニキータ)。使い回しかセルフパロディか、どちらだろうか。
ちなみに、主人公の年齢「28歳」にズッコけた。
10作目:アーサーとミニモイの不思議な国(2006)
体長2mmに縮んでしまった少年が不思議な妖精の王国を大冒険する姿を描く。
10作で監督業をやめると公言していたリュック・ベッソン。3部作と言ったあたりから嫌な予感がした。
このあたりから自身の映画スタジオ「ヨーロッパ・コープ」(と、プロデューサーの妻ヴィルジニー・シラ)のために製作している気がする。
11作目:アーサーと魔王マルタザールの復讐(2009)
体長2mmに縮んでしまった少年が不思議な妖精の王国を大冒険する姿を描く二作目。
観ていない。
12作目:アーサーとふたつの世界の決戦(2010)
体長2mmに縮んでしまった少年が不思議な妖精の王国を大冒険する姿を描く三作目。
観ていない。
13作目:アデル/ファラオと復活の秘薬(2010)
最愛の妹の命を救うため、古代エジプトの秘宝を探すアデル。その一方、化石から翼竜が孵化する事件が起こる。
観ていない。
14作目:The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛(2011)
ミャンマーで民主化運動を牽引し、アジア女性初のノーベル平和賞を受賞したアウンサンスーチーの半生を描く。
観ていない。
15作目:マラヴィータ(2013)
FBIの証人保護プログラムを適用され流転生活を送る元マフィアのブレイク一家と、彼に恨みを抱くマフィアとの対立を描く。
観ていない。
16作目:LUCY/ルーシー(2014)
アクシデントにより脳に異変を来したごく普通の女性・ルーシーは、脳が覚醒し、人知を超えた能力を次々と発揮し始める。
観ていない。
17作目:ヴァレリアン 千の惑星の救世主(2017)
タイムトラベルを行う2人のエージェントが宇宙を舞台に活躍する姿を描く。
観ていない。
18作目:ANNA/アナ(2019)
昼はファッションモデル、夜は暗殺者という女性が活躍する。
観ていない。
まとめ
11作目以降、ちゃんと観てなくて我ながらビックリしてしまった。いつの日かちゃんと観ようと思う。
その時は、こちらのサイト「ホビヲの映画感想画」にてレビューするはず。