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アクション映画の金字塔!「ダイ・ハード」が最高に面白い10の理由

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「おすすめの映画を一本だけ教えて」と言われたら、私は迷わず『ダイ・ハード』を選ぶ。

ダイ・ハードは、1988年製作のアクション映画。あらすじはこんな感じ。

クリスマス・イブの夜、LAのハイテクビルを最新兵器で武装した謎のテロリスト集団が襲った!彼らの要求を拒んだ重役達は即座に射殺。なすすべも無く怯える人質たち。ビルの中にいた非番警官ジョン・マクレーンは外部との連絡が一切遮断された中、ただ一人命をかけた闘いを挑んだ!

上映時間は2時間12分。テンポが重要なアクション映画からするとかなり長め。しかし、この映画には無駄なシーンがひとつもない。アクション映画でありながら、その設定・伏線・演技・音楽、どれもが一級品なのだ。

その魅力をお伝えしたい。

この映画は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演で『コマンドー2』になる可能性もあったらしい。いやいやいや、想像できない。文句を言いながら、嫌々敵と対峙する人間味溢れるキャラクターが魅力の映画なのに。

「イピカイエー、くそったれ!」と毒吐きながら、敵に立ち向かうジョン・マクレーン。運の悪い主人公に観客は感情移入する。自分ならどう立ち回るだろうかと考える。それまでのアクション映画で活躍する超人ではなく、彼は人間なのだから。

ジョン・マクレーンを演じるのは、ブルース・ウィリス。故淀川長治氏に「バイキンみたいな名前の男」と言われたハゲ気味の男優だ(当時)。

原作では、テロリストがビルを占拠する目的は、ピノチェト政権への武器輸出を糾弾するためだった。しかし、テーマが重いと考えた20世紀フォックスは犯行理由を変更した。(ちなみに、ピノチェト政権といえば、若き宣伝マンのCMが政権打倒に寄与したという名作映画「NO」がある。予告編が最高にステキ)

日本の勢いが半端なかった1988年。「テロリスト」が押し入ったのは、日本企業の超高層ビル、ナカトミ・プラザとなった。

ハリウッド映画で描かれる日本人には、違和感を覚えるケースが多い。もっとも「おれをおこらせたいのか!(『ライジング・サン』のショーン・コネリー)」「やっちまいなー(『キル・ビル』のルーシー・リュー)」など、逆に面白く感じるシーンもある。

ハリウッド作品が日本を描くと聞くと、嬉しいという気持ちとともに「ちゃんと描いてくれるだろうか」という不安がよぎる。

しかし、『ダイ・ハード』に登場する日本人は、かっこいい。「そうそう、こうだったらいいな」という理想が描かれている。観ていて嬉しくなる。

でも、殺されてしまうのだが。

基本的に『ダイ・ハード』は、ひとつの高層ビルの中で展開する。

ジョン・マクレーンは、30階の人質を救うため、31階、32階、33階あたりで奮闘する。場所が限定され、人質を救うという目的も明確であるため、話が分かりやすい。

移動のための、エレベーター、階段、排気ダクトも映画において重要な要素、舞台となる。閉ざされた世界で、いかにミッションを完遂するか。圧倒的不利な状況を知恵を絞って、いかに攻略していくか、そのゲーム性が観るものを魅了するのだ。

もっとも、何階にいるのか混乱することもあるのだが。

悪役が魅力的な映画は面白い。『ダイ・ハード』の悪役、テロリストの首魁を演じるアラン・リックマンは最高だった。2016年、惜しまれつつこの世を去ってしまった彼の一番の当たり役は、「ハリーポッター」のスネイプ先生ではなく、ハンス・グルーバーだと思っている。

ジョン・マクレーンとハンス・グルーバーがはじめて遭遇するシーン。それまで声でしかお互いを知らなかった二人。不利な状況にあるハンスは訛りを上手く使って、別人ビル・クレイを演じる。

このシーンを見ていつも思う。アラン・リックマンが使い分けた訛りのある英語と訛のない英語、日本人が演じたらどうなるのだろうか。そして、関西弁と標準語を使い分けるアラン・リックマンを想像する。

「ぼく、逃げてきてん!助けてえな!」

アラン・リックマン最高。

もう一人の悪役も見逃せない。ジョン・マクレーンに弟を殺された兄、カールを演じるのは、2メートル近い身長のアレクサンダー・ゴドノフ。ゴドノフである。名前からして強そうだ。オープニングのクレジットで表示されるゴドノフの文字がすごく好き。とにかく存在感が半端ないのだ。

彼の経歴がまた面白い。ロシアのボリジョイ・バレエ団で活躍し誰もが知る超スターだったが、アメリカに亡命。『ダイ・ハード』公開の1年前、1987年に帰化している。

残念ながら、1995年に彼も鬼籍に入っている。心臓病とのことだった。

ひとつのビルの中でのお話だが、それを見守るビルの外でも物語が展開する。ジャーナリスト、FBI、市警察、家族、など登場人物も多数。

物語で重要な役割を果たすのが、ビルの外でジョンの支えとなるアル・パウエル巡査部長だ。ビルからの緊急通報を受けて、確認するように言われた彼は、ampmでドーナツを買うところだった。

アメリカにしかないコンビニだと思っていたampm。日本で見つけたとき、あまりに嬉しくてドーナツを購入したのはいい思い出だ。残念ながら、ampmは日本から撤退してしまった。ぼくがもっとドーナツを買っていればと悔やまれる。

パウエル巡査部長を演じたのは、レジナルド・ヴェルジョンソン。言っておくが、彼の演技は臭い。わざとらしい。しかし、そこがいい。

ジョンと無線で会話する時の無線機のボタンの押し方。あの手をぐるっとやって押すのを見ると、いつも「ワザとらしー」と思ってしまう。しかし、憎めない存在なのだ。

なんだかダメなやつという印象が、最高に素敵な伏線となっているのだ。

夫婦を長く続けていると、二人にしかわからないものがある。あの人ならこうする、あの人ならこう言う。目の前にいなくても、お互いにやりそうなことが分かる。

『ダイ・ハード』では、そんなジョンとホリーの夫婦関係が見事に描かれている。

暴れまくるカールをみてホリーが言う。「あんなに人をいらだたせるのは、彼しかいないわ」と。長い夫婦生活で、どれだけ彼に苛ついてきたのか、心中お察ししますと言葉をかけたくなる名台詞。

二人の関係は映画の進行とともに大きく変わっていく。結びつき離れまた結びつく、そんな二人の想いが、ドラマの進行に重なり合い見事に連動する。

アクション映画は、テンポが重要だという。観客を飽きさせない展開、細かいカット割り。上映時間も1時間半程度が良いらしい。

しかし、『ダイ・ハード』の上映時間は、2時間12分と長い。今の風潮なら、42分間はカットされるかもしれない。しかし、それはできない。繰り返し観れば分かるが、恐ろしいことにすべてのシーンに意味があるのだ。

全てを解説するとネタバレになるので、ひとつだけ例を挙げる。

ジョンとホリーが再会する冒頭のシーンで、ウザいキャラの同僚エリスが言う。「ホリーは表彰されて、会社からロレックスをプレゼントされたんだぜ!見ろよ」と。エリスというウザいキャラを紹介しつつ、唐突に登場する腕時計のくだり。この腕時計は、会社とホリーとの繋がりを意味している。

彼女の時計はクライマックスで、ある大きな役割を果たす。二人の関係はその後どうなるのかを示唆するシーンだ。そう思ってみると非常に意味のあるモチーフとなっている。

何回目かでそれに気づいたとき、震えてしまった。

ちなみに、脚本家三谷幸喜は和田誠との共書「それはまた別の話」で言っている。

「ダイ・ハード」の決定稿を作家がただ一人で机の前で書いたんだとしたら、僕は潔く筆を折ります。折らないかも知れない(笑)。
P.169

それだけ、素晴らしい脚本なのだ。

排気口ダクトを這いずり回るジョン。タンクトップは汚れに汚れている。しかし、注意深い観客は違和感を覚えるはずだ。

「あれ?ジョンの着ているタンクトップきれいになってない?」と。

タンクトップは作品の進行とともに汚れていくはずなのに、汚れの度合が、進行と連動しない。汚れたり、きれいになったり、汚れたり、きれいになったりを繰り返すのだ。

タンクトップの汚れだけではない。クライマックスのあるシーンでは、ジョンの頬に着いた血が次のカットではきれいになっている。注意深く見ると『ダイ・ハード』では、編集マジックの数々を目の当たりにできるだろう。

スクリプターは何をやっていたんだ!とつっこみながらも、その雑な仕事を楽しむこともできる。

いい意味での編集の雑さが、魅力のひとつなのだ。

10

映画冒頭、空港からホリーの待つビルへ向かうリムジンの中。運転手のアーガイルがかけるラップ調の曲に、ジョンは言う。「クリスマスなのに、こんな曲かい?」答えるアーガイル。「これがクリスマスソングですよ!」

「なんかちがうよな」と観客は思う。冒頭に植え付けられたもやもや。驚くべきことにこのもやもやが、最後の最後で解消される。

映画の最後の最後、一件落着となった後に流れるオーケストラ。

「うぉー、これがクリスマスソングなんだー!」となる。最高のハッピーエンドと共に、本当に聴きたかったクリスマスソングが流れるのだ。

これほどまでに完璧な演出は、そうそう味わえないと思う。

まとめ

映画「ダイ・ハード」、本当におすすめなので機会があれば是非鑑賞してほしい。