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映画「セッション」を観て思う、最後の演奏シーンが最高な7つの理由


セッション(字幕版)

映画「セッション」をようやく観た。各所で絶賛されているのは知っていたが、「鬼教官が怖いトラウマ映画」という評判や、「みんながいいという作品をいいという自分がかっこわるいと思う病」を発症しているため、敬遠していた。

しかし、ネットフリックスで視聴対象になっていたので観賞。映画で震えるのは久方ぶり。想像以上の傑作だった。自分の映画人生の中でベスト3に入る作品かもしれない。

特に最後の演奏シーン。時間にして9分ちょっと。数えたら220カットくらい。このシーンを繰り返し、3日で15回以上観ている。なぜ最高なのか、自分なりに考えたところポイントは7つほどあったので、それらを書いていく。

なお、ここから先は強烈なネタバレとなるため、まだ映画「セッション」を視聴していない人は、Amazonビデオで300円払うか、ネットフリックスに入るかして、映画を観てから読んでほしい。

それでは、いってみよう。

1、上着を脱ぐアンドリューとフレッチャー

演奏が始まる直前、「わたしをナメるなよ。密告したのはお前だろ」と告げるフレッチャー。アンドリューが知らない曲「アップスウィンギン」を演目に。

譜面なしでチグハグな演奏を続けるアンドリュー。観客席には著名な批評家がいる。彼らの前で醜態を晒せば音楽人生は終わり。意気消沈のアンドリューに「お前には、才能がない」と告げるフレッチャー。鬼だ。個人的な復讐を、大事な舞台でやってしまうところが狂ってる。

肩を落とし、舞台を後にするアンドリュー。

打ちのめされた息子を守ろうと、すぐさま舞台袖に走る父親。アンドリューとハグし、「さぁ、帰ろう」。しかし、アンドリューは踵を返す。「どこへ行く?」という父を背に、上着を脱ぎ、舞台へ戻る。

上着を脱ぐことで、超サイヤ人になった感じがするカット。

一方、フレッチャーはどうか。よく見てほしい、最後の最後で上着を脱ぐではないか。本気の指揮者と奏者。上着を脱ぐカットでそれがビンビンに伝わってくる。

最高である。

2、誰の合図で曲を始め、終えるのか

「今度はスローな曲です。おそらく皆さんご存知の、、、」

2曲目の紹介をしようとしたフレッチャーを無視し、ドラムを叩き出すアンドリュー。主導権を奪おうと狼煙を上げる。呆れた顔のフレッチャー。この時点ではまだ「仕方ねえな、バカやりやがって」という感じ。

「合図する。キャラバンだ!」と隣のベース奏者に告げる。「3、4」と合図し、ベースが入る。続いて管楽器も入る。

中盤、1時間36分くらいのところでフレッチャー(管楽器)とアンドリューのドラムの戦い。両者は、パンフォーカスで交互に映し出される。フレッチャーの顔は、まだ余裕。むしろ、楽しんでいる。「まだ、俺のバンドだ。俺の曲だ」といった感じ。

そしてクライマックス、指揮者の合図で曲が終わる、はず。しかし、終わらない。ひとりドラムを叩き続けるアンドリュー。「お、おまえ、、、」という感じの唖然としたフレッチャーを置いてきぼりにして、ドラムソロ。

一旦照明が暗くなるが、まだつづくんだ。。と(多分、照明の人が思って)アンドリューに光が当たる。

演奏を止めないアンドリューにフレッチャーが近づき、問う。

「アンドリュー、何のマネだ?」「合図する」

曲の主導権を握るのは誰か。その戦いの描写が最高。

3、反抗のシンバルを受け止めるフレッチャー

言うことを聞かないアンドリューに対し、「お前の目玉をくり抜いてやるからな」というフレッチャー。シンバルをジャーン!と叩いて反抗の意を表明。

揺れるシンバルに後ずさるフレッチャー。

しかし終盤、アンドリューによって力強く叩かれたシンバルはグラッとずれてしまう。フレッチャーはすぐさま位置を直す。

もはや敵対ではなく、共に最高の演奏をつくるために、いままで自分ができなかった第二のチャーリパーカーを生み出すために。教師と生徒、指揮者と奏者を超えた、ひとつの作品を作り上げる二人。

最高である。ここで震える。間違いなく震える。

4、トントコトントコからのスピードアップ

曲の終盤、ストロークが終息していく、トントコトントコ、トコ、トコ、トコってなっていく。フレッチャーが抑えるように合図し、それに従うアンドリュー。そしてストロークを早めるよう合図。スピードアップし、盛り上がり、ドドドン、ドドド、ドドンドドンと、バスドラム。

乱れ打ちの様相。

敵対しているようで、協力しているようで、この二人の関係性が何とも言えずドラマチック。

5、舞台の袖から、息子を見守る親

ここで、壮絶な息子の演奏をただ見つめる父親のカットが挿入される。

踵を返し舞台に戻った息子。妻が出て行った後、一緒にポップコーンを食べて映画を観ていた息子、守るべきと思っていた息子。しかし、目の前でドラムを叩きまくるのは、ひとりの芸術家だと確信する。もう、か弱い一人の子供ではない。

一流の表現者をみる父親の表情が最高。

6、「Fuck you」からの「Good job」

曲の前半、フレッチャーに、口の動きで「くそったれ(Fuck you !)」言うアンドリュー。

しかし、最後の最後、フレッチャーはアンドリューに何と返したか。カメラは口元を映さないが、明らかに「Good Job」と言っている。それまで、安易な「Good Job」がジャズをダメにしたと嘆いていたフレッチャーがこの壮絶な演奏を受けて力強く言う。

歯を見せて笑うアンドリュー。

もう、最高である。

7、演奏終了後、握手はいらない

ジャージャーン!と最後をキめ、演奏終了。そして、エンドロール。

ベタな演出なら、ここで観客の拍手が入りそうなものだが、入らない。音楽を作っているのは舞台の上の指揮者と奏者。事実、演奏中も観客の画はまったく映らない。

演奏中は、音楽を創り上げる指揮者と奏者だけの世界が繰り広げられる。

もう最高。最後の最後まで最高である。

まとめ

映画「セッション」、最高としか言いようがない。あなたもそう思わないだろうか。

おまけ、トランス状態のシーンでセミの鳴き声

1時間38分くらい、シンバルをチャンチャカチャンチャカ叩いていくうちに、演奏が聞こえなくなっていく。無我の境地。トランス状態になっていく。耳から滴り落ちる汗。

ここでかすかにセミの鳴き声が聴こえた。「嗚呼、トランス状態でセミの声ってなんだかかっこいいな」と一瞬思ったが、なんのことはない。窓の外で鳴いている現実世界のセミだった。

本当に観るべき作品は、映画館で観ようと思った。

セッション(字幕版)
(2015-10-21)
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